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叢生(でこぼこ、八重歯)とは?

顎の骨の歯が生えるエリアと歯の大きさのアンバランスで、歯が小さい場合は空隙歯列、歯が大きい場合は叢生(そうせい)と呼ばれ、英語ではCrowding(こんざつしている状態)と言います。叢生の表現形は様々ですが、前歯(犬歯から犬歯までの6本)が凸凹だと見た目の問題で治療されるケースが多いです。親知らずを除く中切歯(門歯)から第二大臼歯(12歳臼歯)の左右で14本の歯の中で、上の犬歯は最後の方に生え始め混雑のしわ寄せがくるため、歯列から外れていわゆる八重歯と呼ばれる状態となります。これに対して下の歯列の場合、第二小臼歯(センターの中切歯から数えて5番目)が最後の方に生えてくることが多く、下の歯列では八重歯は少なく、その第二小臼歯が歯列から外れて生えてくることがよくあります。前歯だけでなく奥歯が凸凹の場合も多いです。見えにくいところなので、治したいところとしては少数派ですが、中程度以上の症状があると噛み合わせに影響し、生活に支障が出てくる 切実な訴えとなります。

原因

上下の顎の前歯が生えるエリアは実は10歳くらいで決まってしまいます。歯が生えることができる骨の大きさより生えてくる歯の幅の合計が大きい場合、凸凹な歯列となります。成長により、上の顎は12歳くらいまで、下の顎は15歳くらいまで、目に見えて大きくなってゆきますが、大きくなった分は12歳臼歯やその後ろの親知らずが生えてくるためのスペースとなります。

小児矯正では、歯列を左右に、また、前後に広げることで大きな半径の円に広げてその円周を長くすることで凸凹の改善を狙いますが、限界があるのは、広げることで骨が大きくなっているわけではないからです。成長以上に骨を大きくする場合は、また特別な処置が必要です。歯の大きさや顎の大きさは遺伝要因が強く、ご両親が凸凹な歯並びだと似た傾向の歯列になることが多いですね。

親子で症状が全く同じでない理由として環境要因が挙げられます。例えば、甘いものが好きで第二乳臼歯が早く抜けてしまうとその後ろに生える第一大臼歯(6歳臼歯)が前方へスリップして、前歯や小臼歯が生えるスペースを消費してしましまいます。また、爪かみや唇噛みなどの癖は前歯の位置を変化させ、凸凹を惹起する場合があります。また、同じ面積の顎の骨でも、歯が生える面が後ろ上がりの急傾斜だと、垂直投影面積は狭くなり、噛む面に対して概ね垂直に近い角度で生えてくる歯にとっては相対的に狭くなるため凸凹の度合いは強くなります。つまり、顔立ちも凸凹の要因となる場合があります。これも遺伝要因と言えます。

弊害

ある程度の凸凹は審美障害と機能障害、衛生障害を引き起こします。

審美障害(見た目の問題)

これは、歯並び治療の1丁目1番地とも言える症状で、前歯が凸凹だと笑ったときや喋るときに見た目が気になりますね。特に、上の前歯は顔の一部と言っても過言ではありません、口を閉じた時の唇の形にも影響し、歯並びが整うことで正面からだけでなく横顔の鼻から下あごのラインにまで影響します。

機能障害(噛めない)

前歯が凸凹で上下あたる歯とあたらない歯があるのはもとより、奥歯が凸凹だとあたるあたらない以上のすり潰す機能が備わらないことがあります。また、均等にあたってないと、顎の関節が痛くなったり、顎が楽な位置で最大面積の噛みしめができず顎をずらして噛む癖がついたりと不自由です。

衛生障害(みがけない)

凸凹が強い部分は、歯みがきが行き届かず、時には1週間に一回くらいのペースで歯科医院でのお手入れが必要です。歯科医院にある特殊な器具を使っても磨けないところはあるため、実は、長い目で見ると、歯列矯正治療結果の主役はここかもしれません。つまり、歯みがきができないとそこから虫歯や歯周病が発生し、30年後には歯を失う予兆がはっきりと見えてきます。八重歯のおばあちゃんがいないのはよく言われる話ですね。

治療

治療の方針は2通りとなります。つまり歯を抜く方法と抜かない方法です。同じ症例で同じ治療結果をだすのに二つの方法があると言う意味ではありません。同じ結果なら歯を抜かない方法がいいに決まっているからです。なんとか歯を抜かずに治療ができないものかな?と考え、患者さまと話し合って方針を決めていきます。

歯を抜く方針決定に至るまでに、その部位と本数を決めるための幾つかの診断基準があります。精密検査をして、前歯を支える骨の厚みと、頭を基準として前歯の位置を距離と角度で座標を求め、治療目標としての前歯の位置(ゴール)を決めていきます。
ある程度の厚みをもつ歯を支える骨の幅の中でバランスの良い位置を調べ、特定するためには精密検査が必要となります。

歯列を広げられるだけ広げてスペースを確保し凸凹を治す方針は、時には骨から歯がはみ出してしまい、歯の本数は減らなくとも多くの歯で支える骨が薄い状態となり、一概に歯を抜かなかったからいい結果とは言えないからです。

歯列を前後左右に広げて確保できるスペースが凸凹よりも6ミリ以上足りない場合は、抜歯方針を選びます。 精密検査をすることではじめて、広げて確保できるスペースを計測できます。口の中を覗いたり、模型やカラー写真で測るだけでは目測をしただけとなり、経験豊富でもばらつきがありますので治療結果にもばらつきがでてきてしまいます。

通常は、左右対称に抜歯を行いますので、2本もしくは4本となりますが、以下の個性を踏まえて奇数本になる場合や左右違う種類の歯を選ぶ場合もあります。

奥歯の噛み合わせの状態

奥歯の噛み合わせは、どの歯とどの歯がここで噛んでほしいという基準がありますので、それに左右差があると同名歯を選ばない方が治療が楽になる場合があります。また、左右対称であっても噛み合わせのずれが大きい場合はむしろ4本ではなく2本に減らし、そのずれをひと山ずらした位置でゴールを設定することで、左右対称は維持しつつも前後のアンバランスをバランスに読み替えることをします。

欠損歯や矮小歯、癒合歯の存在

生まれつき歯が少なかったり、矮小歯と言って標準サイズよりも小さい歯があったり、癒合歯と言って二本の歯がエナメル質レベルでくっつき2本で1.5本分程度の大きさしかない歯が生えている場合があります。左右対称の噛み合わせを維持し、歯列の真ん中を顔面の真ん中に設定するために上下左右非対称に抜歯部位を 選択する場合があります。

大きい虫歯や歯根神経の状態が悪い場合

状態の悪い歯がある場合、出来るだけその歯を抜歯対象にします。 噛み合わせの対称性と真ん中の一致にしわ寄せがきたり、治療期間が延長したりしますので、それとにらめっこしながら方針(抜歯部位と本数)を話し合って決めてゆきます。

いずれの場合でも、上下の歯列の表が裏に針金のような装置がつきます。

症例紹介

叢生
成人矯正
表側矯正
治療前
装置装着
治療後

上下の歯列に中程度以上の凸凹(主訴)があり、下あごの開閉時に滑走運動を認めない症状がありました。上下左右の第一小臼歯を合計4本抜歯する方針を選択し治療を開始しました。顎関節の症状は著変なく進みましたが、右下中切歯の歯肉ラインは戻らず、負担減のため前歯部の咬合は深追いしませんでした。要した治療期間は39か月(予定期間通り)でした。

主訴 でこぼこ
診断名あるいは主な症状 叢生
年齢 40代
治療に用いた装置 表側矯正装置
抜歯部位 上下左右の第一小臼歯を合計4本抜歯
治療期間 39か月
治療費概算 [基本治療費] ¥660,000-
[審美ブラケット加算] ¥132,000-
リスク・副作用 治療中の痛み、治療後の後戻り、歯肉退縮・歯根吸収
叢生
成人矯正
舌側矯正(裏側矯正)
治療前
装置装着
治療後

下前歯の凸凹、が主訴でした。下の前歯の1本抜歯は、上の歯と幅のバランスが崩れ、抜歯部位に歯肉退縮が起きた時に審美障害となるためあまり行いません。しかし、治療期間の短縮が狙え、また精密検査で上前歯6本と下前歯5本で幅のバランスが取れると診断し、左下側切歯の1本抜歯の方針でスタートしました。治療期間は25か月(予定期間越え)でした。

主訴 下前歯の凸凹
診断名あるいは主な症状 叢生
年齢 中学生
治療に用いた装置 舌側矯正装置
抜歯部位 左下側切歯の1本抜歯
治療期間 25か月
治療費概算 [基本治療費] ¥648,000-
[裏側ブラケット加算] ¥486,000-
リスク・副作用 治療中の痛み、治療後の後戻り、歯根吸収、歯肉退縮、知覚過敏
叢生
成人矯正
マウスピース型矯正装置(インビザライン)
治療前
装置装着
治療後

受け口傾向の骨格をお持ちで、小臼歯を4本抜歯の方針で歯列矯正治療既往がある方でした。後戻りした咬み合わせの再治療をご希望でした。抜歯方針は選択肢になく、ズレが大きい右側の咬み合わせは奥歯を1本1本遠心移動することでスペースを確保しました。要した治療期間は24か月(予定期間通り)でした。

主訴 後戻りした咬み合わせの再治療
診断名あるいは主な症状 叢生
年齢 40代
治療に用いた装置 マウスピース型矯正装置(インビザライン)
抜歯部位 非抜歯
治療期間 24か月
治療費概算 [基本治療費] ¥648,000-
[インビザライン加算] ¥162,000-
リスク・副作用 治療中の痛み、治療後の後戻り、歯根吸収、歯肉退縮