上顎前突(出っ歯)とは?
名称から想像される通り、上の顎が下の顎に対して前に出ている骨格を示します。 歯は顎の骨にささっていますので、顎が前にあると上の前歯も出ていることが多いです。
矯正歯科で、その噛み合わせを分類する場合、この上顎前突は大きく四つに分類されます。
- 上述の通り、上の顎が出ていて、上の前歯が出ている方
- 上の顎が出ているというより、下の顎が小さく、後退した骨格の方(相対的に上の歯が出ている症状)
- 上下の顎の骨に前後的な異常がないのに上の前歯が前に出ている方、もしくは下の前歯が後ろに倒れている方
- 上記原因が混在している方
*矯正歯科で細かい検査を行うのはどこが原因で出っ歯の症状が出ているかを調べるためです。
原因
骨が原因の場合、遺伝要因が多いです。その方のご家族ご家系代々続く顔立ちが上下のバランスを決めます。前後的なバランスが極端に崩れていると歯を動かすだけでは噛み合わせが取れないため、骨を切って動かす外科的手法を併用した治療計画となります。
歯が原因の場合、お口の周りの悪い癖(指しゃぶりや爪噛み、唇噛みや口呼吸などが含まれます)が悪影響を与えていることが多いです。大人も子供も基本的な健康のため、また、治療後の噛み合わせの安定のため、“はなで息、べろは上あご、くち閉じる”を励行しましょう!
弊害
上の前歯が出ていることで、大きく3つの弊害があります。
口が閉じにくい
可能であれば、くちびるの力を抜けば上下の唇が当たるのが理想的です。
上下の前歯の噛み合わせがとれない
奥歯で噛んだ時に、その噛み締めを10とすると6くらいの力で上下の前歯が当たるといいです 。ハンバーガーをかぶりつき、レタスまで噛み切れる噛み合わせを目指します。
笑顔を真横から見た時、上の前歯が出ていると審美障害が出る場合がある
笑うと上の前歯は見えます。真横から見たとき、その歯と顔のバランスが悪くなることがあります。当院では、自然頭位(ある程度背筋を伸ばして正面をみる姿勢)で、上の前歯が顔面に対して地面に垂直に刺さって位置を目指した治療方針を立てます。
治療
当院では外科的手法を併用した治療はしておりませんので、歯を抜く方法と歯を抜かない方法に分けてご説明します。同じ症例で、同じ治療結果を得る上で二つの方法があるという意味ではありません。同じ結果なら歯を抜かない方法がいいに決まっているからです。なんとか歯を抜かずに治療ができないものかな?と考え、患者さまが求める結果によっては歯を抜く方法を選択します。
Method.01歯を抜く方針を選ぶ際にはその部位と本数を決めるために幾つかの診断基準があります。
奥歯の噛み合わせの状態
上の前歯が出ている方は奥歯の関係もここで噛んでほしいところより、上の奥歯が下に対して前で噛んでいます。この状態が強いと難しい治療となります。
前歯が出ている程度
つまり、前歯をさげたい距離が長い場合。前歯が前に出ているほど難しい治療となります。
凸凹の具合
凸凹が強いと歯を抜いてできた隙間が前歯をさげること以外に消費され、より難しい治療となります。逆に歯と歯の間に隙間が多い空隙歯列の場合、歯を抜く可能性が下がるということになります。
Method.02歯を抜かない方針をえらぶ場合は、まず前歯をさげる必要量が少ないことが特徴となります。
奥歯の噛み合わせが比較的良く、上記、機能障害や審美障害が少ない場合は、非抜歯治療のチャンスとなります。抜かずに前歯をさげるスペースを確保するために、上の奥歯を後ろに動かし、結果的には歯列全体をさげる変化を狙います。親知らずが埋まっていてその動きを邪魔する場合は、まず親知らずの抜歯からスタートとなります。また、すでに歯を抜いて治療された方の後戻りの再治療(抜歯方針を選べない)や抜歯だけでは前歯が目的のところまでさがらない場合もこの奥歯を後ろに動かす手法を応用します。いずれの場合でも、上下の歯列の表が裏に針金のような装置がつきます。
症例紹介
前歯の並び(上の中切歯が出ているところ)が主訴でした。ご本人、抜歯治療まで踏み切れず可能な限りのアライナー治療を希望されました。ゴム掛けを併用しながら上の奥歯を1本ずつ遠心移動し、前歯部のエナメル質スライスのコンビネーションでスペースを確保しました。要した治療期間は28か月(予定期間越え)でした。
主訴 | 上の中切歯が出ている |
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診断名あるいは主な症状 | 上顎前突 |
年齢 | 20代 |
治療に用いた装置 | マウスピース型矯正装置(インビザライン) |
抜歯部位 | 非抜歯 |
治療期間 | 28か月 |
治療費概算 |
[基本治療費] ¥648,000- [インビザライン加算] ¥162,000- |
リスク・副作用 | 治療中の痛み、治療後の後戻り、歯根吸収、歯肉退縮 |
上の前歯が出ている、が主訴でした。正中離開もありました。また上左右の第二大臼歯が2本先天性欠如でしたので、小臼歯非抜歯方針で治療をスタートしました。審美障害、口唇閉鎖機能向上、前歯部咬合再構成が達成されました。要した治療期間は23か月(予定期間通り)でした。
主訴 | 上の前歯が出ている |
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診断名あるいは主な症状 | 上顎前突 |
年齢 | 中学生 |
治療に用いた装置 | 表側矯正装置 |
抜歯部位 | 小臼歯非抜歯 |
治療期間 | 23か月 |
治療費概算 |
[基本治療費] ¥660,000- [審美ブラケット加算] ¥132,000- |
リスク・副作用 | 治療中の痛み、治療後の後戻り、歯根吸収、歯肉退縮 |